エンドソーム/リソソーム経路は、物質の輸送と分解において重要な役割を担う。Multivesicular body(MVB、多小胞体)は、エンドソーム外膜が内腔側に出芽し生じた多数の小胞をもつエンドソームの形態学的呼称である。MVB形成により、エンドソーム膜に存在する因子は細胞質と隔離され、リソソーム内腔へと選別輸送される。本研究は、MVB形成を制御するアダプタータンパク質Alixとその相互作用タンパク質に着目し、MVB形成の分子基盤を解明することを目的としている。研究計画に沿い、Alixの相互作用因子であるALG-2とendophilinの結合領域が異なること、ALG-2結合領域がAlixのカルボキシ末端領域の細胞内における斑点状の分布に必要であることを明らかにし、報告した。また、酵母Vps32/Snf7のヒトホモログCHMP4a、4b、4cがAlixのアミノ末端領域に直接結合することをin vitro結合実験により示した。Northern Blot解析の結果、CHMP4の中でCHMP4bの発現量が有意に高く、とくに心臓、骨格筋で豊富に発現していることが明らかとなった。HeLa細胞に発現させたCHMP4bは、斑点状の局在を示し、エンドソームマーカーの分布と一部、一致した。CHMP4bの過剰発現により、細胞質に存在するAlixがCHMP4bの局在する膜区画に動員されること、ユビキチン化タンパク質が蓄積すること、エンドサイトーシスされたEGFの消失が抑制されることを見出し、報告した。現在、Alix、CHMP4bのさらなる相互作用タンパク質について解析をすすめており、MVB形成制御複合体の形成機構の解明につながることが期待される。また、それらの因子の様々な変異体を過剰発現させた細胞における物質輸送の追跡は、MVB形成が果たす生理的意義に新たな視点を加えられることも予想され興味深い。
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