ここ数年の研究から、細胞内小胞輸送が、細胞の極性形成、細胞運動、細胞接着といった重要な細胞機能に関与していることが明らかになっており、普遍的膜融合装置であるSNARE系の構成因子の一つであるシンタキシンが、細胞内小胞輸送において中心的役割を担っていると考えられている。しかし、細胞内小胞輸送におけるシンタキシンの機能と作用機構については、いまだ不明な点が多い。そこで、本年度は、最近発見した新たなシンタキシン結合蛋白質であるTaxilinに焦点を絞り、細胞内小胞輸送におけるTaxilinの機能と作用機構について研究を行い、以下の新たな知見を得た。シンタキシンは、輸送小胞が標的膜にドッキングする過程で、Munc18や他のSNARE系構成因子であるSNAP-25やVAMPと段階的に複合体を形成すると考えられている。そこで、Taxilinが、輸送小胞が標的膜にドッキングするどの過程に関与しているかを明らかにするために、Taxilinとシンタキシンの結合に及ぼすMunc18とSNAP-25の影響を検討したMunc18とSNAP-25は、Taxilinとシンタキシンの結合を各々容量依存性に抑制した。また、Taxilinは、少なくともMuncl8やSNAP-25と複合体を形成していないシンタキシンに結合した。これらのことから、Taxilinは、シンタキシン-SNAP-25-VAMP複合体が形成されるドッキング過程の前段階でシンタキシンと結合すると考えられた。このように、本研究計画は予想以上に進展し、当初の計画をほぼ達成することができた。
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