研究概要 |
細胞内小胞輸送は、細胞内小器官の形成や細胞運動、細胞質分裂などの重要な細胞機能に関与しており、Tethering因子、Rab低分子量G蛋白質、SNARE系などの一群の蛋白分子によって時間的・空間的に制御されていると考えられている。この数年、私はSNARE系構成因子の一つであるシンタキシンファミリーに着目して研究を進めており、昨年度は新規シンタキシン結合蛋白質であるtaxilinを発見した。本年度は、まず哺乳細胞においてtaxilinと相同性の高い分子を2つ発見し、taxilinと2つの相同分子をそれぞれα-,β-,γ-taxilinと命名した。Taxilinファミリーは、C末端側部分に酵母のTethering因子であるUso1と相同性の高いコイルド-コイル領域を有していた。次に、蛋白質合成の制御に関わるNAC (nascent polypeptide-associated complex)が新たなα-taxilin結合蛋白質であることを見出した。NACの2つのサブニット、αNAC、βNACは、そのC末端側領域を介してα-taxilinのコイルド-コイル領域に結合した。αNACをCOS-7細胞で強発現させたところ、αNACは細胞質以外に核にも局在した。一方、αNACをα-taxilinと共に強発現させると、αNACの核への局在が抑制された。αNACの核への局在の抑制は、αNACとα-taxilinとの結合に依存していた。さらに、β-およびγ-taxilinにおいても同様の結果が得られた。近年、αNACは、核内にトランスロケートして転写を制御している可能性が示唆されており、taxilinファミリーは、細胞内小胞輸送以外に、αNACを介して転写制御にも関与している可能性がでてきた。このように、本研究計画は予想以上に進展し、当初の計画をほぼ達成することができた。
|