研究概要 |
超好熱菌コハク酸:キノン酸化還元酵素複合体(SdhABCD)の大腸菌における機能発現・分子集合機構の解明を目的として各種解析を行ない、平成16年度には以下の成果を得た。 1.SdhA,B,C,Dを発現ベクターの改変を継続的に試み、各遺伝子の組合わせを変えつつ発現検討し、発現のプロファイリングとEPRスペクトルの相関につき、詳細に検討した。さらにコントロールとして大腸菌のsdhオペロンをクローニング、同様に発現ベクターに組込み、古細菌酵素の発現パターンと対比、検討した。両者の発現パターンには違いも見られたが、共通の問題点として、両酵素ともにSdhBのみの単独発現が、最も困難なことがわかった。 2.すでに発現に成功しているSdhB-Nドメインの[2Fe-2S]クラスターの酸化還元電位が、SdhABCD複合体と比べて大きく低下している原因を検討した(投稿準備中)。この機能上大変重要な[2Fe-2S]クラスターの酸化還元電位調節機構解明に関連して、モデル系として、Rieske-type [2Fe-2S] proteinで作成していたクラスター近傍の各種部位特異的変異酵素の分光学的・X線結晶構造解析等を行ない、クラスター近傍の主要電位調節因子解明を試みた。これらの成果の幾つかは、原著論文として公表した。 3.大腸菌で発現させたSdhABC(D)複合体では、SdhAのフラビン共有結合化が起らず、またSdhBが宿主プロテアーゼにより切断されやすいことがわかってきた。SdhA、前駆体については、フラビニレーション機構の構造基盤を明らかにするために、X線結晶構造解析に適した結晶化を各種条件下、すすめている。またHisを介した共有結合をすることから、光還元した酵素を用いたpulsed EPR (ESEEM)法による検討も合わせてすすめている。一方、SdhBについては、質量分析(MALDI-TOF)等によるプロテアーゼ切断部位の同定を今後検討し、宿主プロテアーゼにより切断されない変異酵素の作成も合わせて行なう予定である。
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