研究概要 |
呼吸鎖複合体IIは、クエン酸回路を構成する酵素であると共に、好気的呼吸鎖電子伝達系の電子の入口の1つとして極めて重要な役割を果たす、複合金属フラビンタンパク質である。本研究では、熱安定かつ祖先型の特徴を有する超好熱性古細菌の呼吸鎖複合体II(Iwasakiら(2002)J.Biol.Chem.277,39642-39648;Liら(2003)Biochemistry 42,15003-150O8)をモデルとし、複合酸化還元膜酵素のサブユニット会合の際、「個々のサブユニット固有のタンパク質機能がどのように変換しうるか」を解明することを目的とした。本年度は以下の成果を得た。 (1)古細菌および大腸菌SdhAにつき、大腸菌を宿主とする単独発現を行ない、いずれの場合もFADの共有結合が起きないことを確認した。古細菌SdhAは安定であり、FADの酸化還元電位(Em)が低いことを示せたが、大腸菌SdhAは不安定でプロテアーゼ分解されやすいことがわかった。 (2)大腸菌SdhABの発現を行ない、このユニットでFAD共有結合化を確認した。古細菌SdhABでは正常なサブユニット会合が起きず、SdhBのC末側鉄硫黄ドメインの発現異常が考えられた。 (3)古細菌遺伝子クラスターは大腸菌で下流側ORFを通常発現できない。古細菌sdhABCDオペロンの各ORFの上流にそれぞれ大腸菌型SD配列を導入した人工オペロンを作成、大腸菌発現を検討し可溶性画分からSdhACDを含むサブ複合体を部分精製した。SdhBサブユニットに相当するバンドは電気泳動で確認できなかったが、断片化した可能性は否定できていない。断片化していないSdhBは膜画分に発現したが、C末側鉄硫黄クラスターの存在を確認するには至らなかった。 (4)本研究に関連して鉄硫黄クラスターのアッセンブリー・分解機構およびそれを研究するための分光学的手法発展を目的とし、呼吸系関連の単純な鉄硫黄タンパク質につき、詳細な分光学およびX線構造解析を継続して行なった。 以上の主要研究成果は、原著論文等として発表した。
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