昨年度に引き続き、アルテミアのトレハラーゼ遺伝子のクローニングを行った。得られたクローンがカバーする約40kbの領域の塩基配列を解析した結果、既知のトレハラーゼcDNA全長に相当する配列がこの領域に含まれていること、これまで解析してきたcDNAは8つのエキソン(エキソンI〜VIII)に由来することが明らかになった。アルテミアトレハラーゼのmRNAには、サイズと発現時期の異なる2種類が存在することが我々の研究からわかっている。この2種類のmRNAが選択的スプライシングにより産生されている可能性を確認するため、エキソンIとエキソンVIIIを挟み込む形でRT-PCRを行い、、既知のcDNAのエキソンIVからVIまでを欠く新規のcDNAが得られた。このcDNAのコードするタンパク質は既知の全てのトレハラーゼに存在するtrehalase signature2と呼ばれる配列を欠くため、酵素機能を持つかどうか不明であり、その役割について解析中である。トレハラーゼ遺伝子の構造および新規cDNAについては第75回に本動物学会(神戸)で報告した。現在、すでにクローニングした範囲内に転写調節領域がありそうかどうかについても検討を行っている。 研究のもうひとつの目的として、トレハラーゼ同様に休眠シストに蓄積されている他の"Cryptic RNA"を検索することがある。平成16年度は、Gene Fishing法を用いて休眠胚と発生再開後の胚で異なる発現をするmRNAの検索を行った。その結果、多くの転写産物は発生再開後に発現が強くなるのに対し、シストの時期から比較的安定して発現するもの、シスト中に多いものも検出された。シスト中に多いmRNAが目指す"Cryptic RNA"である可能性が高いと考え、現在その特定を行っている。
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