研究概要 |
1.本研究者らは、ラットのシアル酸転移酵素ST6Gal Iは、BACE1プロテアーゼによってLeu37とGln38の間で切断され、その後に膜内腔のアミノペプチダーゼ活性によってN-端の3アミノ酸残基が削られ、細胞外にGlu41から始まる可溶型ST6Gal I(E41型)が分泌される機構を見出した(S.Kitazume, et al. : Characterization of α2, 6-sialyltransferase cleavage by Alzheimer's β-secretase (BACE1) J. Biol. Chem. 278, 14865-14871, 2003)。 2.本研究者らの発見である、BACE1によるST6Gal Iの切断現象は、in vitroおよび培養細胞系での実験系で見出したことであった。が、今回BACE1ノックアウトマウスにおける血漿中の可溶型ST6Gal I量が、野生型の約半分に減少していたことを見出した(2)。このことから、in vivoでも、BACE1はST6Gal Iの切断・分泌に関与していることが明らかになった。古くから炎症時に血清中のST6Gal Iが増加することから、ST6Gal Iは急性期タンパク質であることが知られている。そこで、Cu-transporting ATPase遺伝子に異常があるため、肝臓に銅が蓄積することで肝障害の生じる変異ラット(LEC)を用いて、血漿中のST6Gal Iの解析を行うと同時に、肝臓中のST6Gal IおよびBACE1 mRNAを定量した。その結果、LECラットにおいて肝炎発症に先駆けて肝臓に銅が蓄積する時期にBACE1 mRNAの発現が増加すると共に、ST6Gal Iの分泌量も増加することが分かった(S.Kitazume, et al. : In vivo cleavage of α2, 6-sialyltransferase by Alzheimer's β-secretase (BACE1) J. Biol. Chem. Submitted)。血清中のST6Gal Iは、より早期段階で肝炎を見出すマーカーになる可能性が考えられる。
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