研究概要 |
本研究者らの発見である、BACE1によるST6GalIの切断現象は、in vitroおよび培養細胞系での実験系に限定していた。そこで2004年度は、実際にin vivoでもBACE1がST6Gal Iの切断分泌に関与しているかどうか調べることにした。ST6Gal Iは肝臓で高発現しているので、血液中に可溶型酵素が多く存在することが酵素活性の検出によって調べられていた。本研究者らは、マウス血漿から可溶型ST6Gal Iを部分精製し、ウエスタンブロットでST6Gal Iの定量解析を行う実験系を確立した。そして、BACE1ノツクアウトマウスにおける血漿中の可溶型ST6Gal I量が、野生型の約30パーセント程度に減少していたことを見出した(参考論文)。このことから、in vivoでも、BACE1がST6Gal Iの切断・分泌に主として関与していることが明らかになった。古くから炎症時に血清中のST6Gal Iが増加することから、ST6Gal Iは急性期タンパク質であることが知られている。そこで、Cu-transportingATPase遺伝子に異常があるため、肝臓に銅が蓄積することで肝障害の生じる変異ラット(LEC)を用いて、血漿中のST6Gal Iの解析を行うと同時に、肝臓中のST6Gal IおよびBACE1 mRNAを定量した。その結果、LECラットにおいて肝炎発症に先駆けて肝臓に銅が蓄積する時期にBACE1 mRNAの発現が増加すると共に、ST6Gal Iの分泌量も増加することが分かった(参考論文)。 参考論文:S.Kitazume et al. J. Biol. Chem. 290, 8589-8595, 2005.
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