研究概要 |
本研究者らは、以前にBACE1プロテアーゼがシアル酸転移酵素を切断し分泌されることを培養細胞系およびin vitroの実験系で見いだした。 今年度は、BACE1ノックアウトマウスの解析を行った。そして、野生型マウスと異なり、ノックアウトマウスの血漿中の可溶型ST6Gal Iが約3分の1程度に減少していることを明らかにした(J.Biol.Chem(2005)280,8589-8595)。また、肝炎モデルLECラットにおいては、肝炎発症に先駆けてBACE1発現が増加し、血漿中の可溶型ST6Gal I量が増加していることも明らかにした。BACE1発現の増加する時期においてLECラットの肝臓は銅の蓄積による酸化ストレスにさらされている。従って、酸化ストレスがBACE1増加の引き金になったことが考えられた。 また、BACE1が他の糖転移酵素をも基質とするかどうか検索を行ったところ、BACE1発現によりST3Gal I,II,III,IVの分泌が増加することが明らかになった(Glycoconjugate J.(2006)in press.) さらに、発現の増加したBACE1がST6Gal Iを切断することで、ST6Gal I産物であるSNAエピトープ量に特異的な変化が起きることも分かった。(論文準備中)。また、血液などの体液中の可溶型ST6Gal Iを定量するためのサンドイッチELISAを確立し、化学物質によって肝炎を惹起させたラットの血漿サンプルを測定している段階である。また、体液中のSNAエピトープ量を定量的に解析する方法を確立した。
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