研究概要 |
真核細胞には、転写・複製中のエラーや不適切なスプライシングにより生じる未成熟な翻訳終結コドン(ナンセンス変異)を含むmRNAを選択的に分解するNMD(Nonsense-mediated mRNA decay)と呼ばれる監視機構が存在している。この作用により、ナンセンス変異をもつ転写産物からC末端側が欠失したタンパク質は生成されない。これまでNMD経路では、通常のmRNA分解と異なり、3'→5'方向の分解は介在しないと考えられていた。先に我々は、新規G蛋白質Ski7が真核細胞の3'からのmRNA分解に寄与することを示した。平成15年度は、このG蛋白質を中心に、3'からのmRNA分解とNMD経路の関連について、酵母を用いた解析から検討を進め、以下の知見を得た。 1、3'→5'方向の分解関連因子の破壊株において、ナンセンス変異を含むmRNAが蓄積することを見出し、NMD経路においても3'→5'方向の分解が寄与することを明らかにした。さらにNMDの3'→5'方向のmRNA分解には、通常のmRNA分解における3'→5'分解機構、すなわち、mRNA分解酵素の本体であるエキソソーム、その補助因子のSki複合体、そして両複合体の共役因子であるSki7が必要であった。2、ナンセンス変異を含むmRNAの3'→5'方向の分解が促進しており、この活性化には、NMD経路で機能するUpf因子群が寄与していることを見出した。3、Upf因子群と3',からの分解関連因子との相互作用の有無を検討したところ、Ski7との相互作用を見出した。さらにSki7上のUpf因子相互作用部位を同定し、野生株に過剰発現することにより、ナンセンス変異を含んだmRNAの3'→5'方向の分解が特異的に阻害された。以上の結果から、Ski7G蛋白質とUpf因子群間の相互作用が、NMD経路の分解促進に必要であることが示された。
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