研究概要 |
本研究において,申請者は世界で初めてクロマチン形成装置をヒストン複合体という形で単離することに成功し,ヒストン複合体の機能解析からクロマチン形成の分子機構について、以下に示す重要な知見が得られた。 1)主要ヒストンであるH3.1および、そのバリアントH3.3をHeLa細胞の核抽出液よりエピトープタグにより精製したところ、10種以上のサブユニットからなる巨大なタンパク質複合体であった。両者ともH4を含むがH2A/H2Bを含まず,既知のヒストンシャペロン群も含まれることよりクロマチン形成装置であることが示唆された。 2)ヒトH3.1とH3.3は5アミノ酸違うだけであり,それらのヒストン複合体中には共通の構成因子も多く存在するが,それぞれ異なるヒストンシャペロンを持つことが明らかとなった。クロマチンへの挿入がDNA合成に依存するH3.1複合体にはPCNAと相互作用するCAF-1 p150,p60が含まれるのに対し,依存しないH3.3複合体はHIRAを持つことが明らかとなり,さらに精製した複合体を用いた再構成実験によりそれぞれのヒストンシャペロンが挿入経路の決定因子であることを証明した。 3)また,これらの複合体内にはH3.1/H3.3とH4を1分子ずつ持つことより、H3/H4が従来考えられてきた四量体ではなく,二量体を基本ユニットとしていることが示唆された。このことは,如何にしてエピジェネティック情報が次代に伝搬,維持されるのかという問題に対して、クロマチン情報の半保存的複製機構という新しい概念を提唱するものである。
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