研究概要 |
我々はヒト培養細胞において世界で初めてクロマチン形成装置をヒストン複合体として精製することに成功した(Cell,2004)。16年度においては、クロマチン形成の分子基盤と、その戦略のバリエーションについて解析する目的で、出芽酵母および分裂酵母の系からヒストン複合体を精製し、以下の解析を行った。 1)出芽酵母H3/H4複合体は、核輸送に関わるKap121や翻訳後修飾に関わるHat1/Hat2、ヒストンシャペロンAsf1を保持するが、ヒトの場合と異なりCAF-1やHirといった挿入因子が存在しないことが明らかとなった。この事実は、1種類のH3しか持たない酵母においては、Asf1がヒストンドナーとしてフリーのヒストンH3/H4と複合体を形成し、CAF1/Hirなどの挿入因子に受け渡すことが示唆される。 2)H3/H4複合体と比較して、フリーのH2A/H2B複合体は非常に多く、ヒストン解離因子FACT(Spt16-Pob3)と結合していることから、遺伝子発現の多い酵母においてH2A/H2Bは非常にダイナミックに振る舞うことが示唆された。他のヒストンシャペロン因子等との相互作用を含め、クロマチン形成の全体像についてさらに解析する必要性がある。 3)分裂酵母のH3/H4複合体は、ヒトや出芽酵母と大きく異なることが明らかとなった。これは分裂酵母ではG2期が長いことと関連がある可能性が高い。実際にG2/M進行制御に関わる因子なども含まれるため、ヒストン複合体解析から細胞周期制御などについて新たなメスが入ることが期待される。
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