研究概要 |
本研究で、レンズを中心とする目の形態形成にHSF1とHSF4がどのような役割を演じているかを明らかにする。そこで今回、HSF4とHSF1の両遺伝子欠損マウスを作製し、レンズ形成におけるHSFの役割を解析した。 HSF4欠損マウスは白内障を発症し、レンズ繊維細胞の封入体構造を伴う形態異常を認めるとともにγ-Crystallin蛋白質の発現が著しく低下していた。両遺伝子欠損マウスでは、形態異常がさらに進行し、γ-Crystallin蛋白質の発現も低下していた。また野生型のレンズ上皮細胞は規則正しい立方体であるの対し、HSF4欠損マウスでは円柱状の形態異常を示した。さらに増殖の亢進をともなうレンズ上皮細胞数の増加を認めた。レンズ上皮細胞の増殖因子であるFGFの発現を検討すると、HSF4欠損マウスで、FGF-1,-4,-7の発現が亢進していた。レンズを用いたクロマチン免疫沈降法の結果より、HSF4とHSF1がFGF-7のプロモーター領域に直接結合し転写調節していることが分かった。興味深いことに両遺伝子欠損マウスでは、HSF4欠損マウスで見られたレンズ上皮細胞の異常は改善され、FGFの発現も野生型まで改善されていた。以上のことから、HSF4とHSF1はレンズ繊維細胞で協調的にγ-Crystallin遺伝子の転写調節を行うことが明らかとなった。一方レンズ上皮細胞では拮抗的にFGF遺伝子の転写調節を行い、レンズ形成において増殖・分化に重要な役割を行っていることが分かった。この研究より、 1.HSFの熱ショック蛋白質以外のターゲット遺伝子を同定 2.HSF分子による遺伝子発現の拮抗的制御 3.HSFがレンズ形成の成熟・維持に必須であることを示した。
|