WASPファミリータンパク質の脳神経系の形態形成シグナルにおける役割

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15770124
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 末次 志郎 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70345031)
• キーワード: N-WASP / mDab1 / Arp2 / 3 complex / actin cytoskeleton

研究概要

mDab1はreelinシグナルにおいて脳の発生における細胞移動をコントロールする遺伝子である。細胞移動はアクチン細胞骨格の再構成を伴い、これはしばしば普遍的なアクチン細胞骨格制御タンパク質によってなされる。そこで、mDab1を非神経細胞(COS-7細胞)に異所的に発現させてみたところ、フィロポディア形成を誘導することを見いだした。このフィロポディア形成はN-WASP依存的であった。N-WASPはmDab1とin vitro,COS-7細胞中、および胎児脳において相互作用することを見いだした。mDab1はN-WASPをin vitroで活性化し、アクチン重合を引き起こした。
また、N-WASPとmDab1の相互作用する領域を同定した。さらに、COS-7細胞中でmDab1はSrcファミリーキナーゼによってリン酸化されることを見いだし、このリン酸化はmDab1のポリユビキチン化、および分解を誘導した。これはフィロポディア形成を抑制した。mDab1はreelin刺激によってリン酸化されることが知られているので、この発見はreelinによるmDab1のリン酸化が細胞骨格の再構成を制御していることを示していると思われる。
mDab1は胎児由来の初代培養神経細胞において成長円錐の先端に存在するが、この神経細胞をreelinで処理し、mDab1のリン酸化を誘導しても神経細胞の形態には顕著な変化が見られなかった。従って、mDab1-N-WASPの経路が、実際の神経細胞においてどのような役割を持っているか、今後解明していく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Sawa M, Suetsugu S, et al.: "Essential role of the C.elegans Arp2/3 complex in cell migration during ventral enclosure"J Cell Sci. 116. 1505-1518 (2003)
• [文献書誌] Suetsugu S, Takenawa T.: "Translocation of N-WASP by nuclear localization and export signals into the nucleus modulates expression of HSP90"J Biol Chem. 278. 42515-42523 (2003)
• [文献書誌] Yamazaki D, Suetsugu S, et al.: "WAVE2 is required for directed cell migration and cardiovascular development"Nature. 424. 452-456 (2003)
• [文献書誌] Suetsugu S et al.: "Differential Roles of WAVE1 and WAVE2 in Dorsal and Peripheral Ruffle Formation for Fibroblast Cell Migration"Developmental Cell. 5. 595-609 (2003)
• [文献書誌] Suetsugu S, Takenawa T: "Regulation of cortical actin networks in cell migration."Int Rev Cytol. 229. 245-286 (2003)
• [文献書誌] Wu X, Suetsugu S, et al.: "Focal adhesion kinase regulation of N-WASP subcellular localization and function."J Biol Chem. 279. 9565-9576 (2004)