1.βIV-スペクトリン・アイソフォームΣ6の機能 βIV-スペクトリンの全長型アイソフォームΣ1と、N末端側の約半分の領域を欠くアイソフォームΣ6のそれぞれの機能を解明するために、Σ1の発現のみをノックアウトできる遺伝子ターゲティングベクターを作製し、これを用いて変異ES細胞を樹立した。そしてこのES細胞をもとにこの変異のホモ接合体マウスを得た。脳ライセートを用いたウエスタンブロット解析の結果、このマウスではΣ1の発現がないこと、そしてΣ6の発現は正常であることが確認できた。そこでこのマウスを用いて解析を行い、以下の結果を得た。(1)脳および座骨神経の切片を抗βIV-スペクトリン抗体で免疫蛍光染色した結果、Σ6はΣ1非依存的に軸索起始部とランビエ節に局在できることが明らかとなった。(2)脳および座骨神経の切片を電位依存性NaチャネルおよびアンキリンGに対する抗体で免疫蛍光染色した結果、このマウスでは、以前に解析したΣ1とΣ6をともに欠失した変異マウスと同様のレベルで軸索起始部とランビエ節におけるNaチャネルとのアンキリンGの局在が低下していた。このことから、NaチャネルとアンキリンGの局在安定化にはΣ1が主要な役割を果たしていることが示唆された。 2.βIV-スペクトリンの可変領域に結合する蛋白質の同定 酵母two-hybrid法によりβIV-スペクトリンの可変領域結合蛋白質として同定された14-3-3蛋白質が、哺乳類細胞の中でもβIV-スペクトリンと結合しているかどうかを、マウス脳のおよび両蛋白質を過剰発現させた培養細胞のライセートを用いた共免疫沈降法によって調べた。その結果、結合を検出することができなかった。したがって両者の結合が安定なものではない、あるいは一過的である可能性が考えられた。
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