研究概要 |
本研究では、Rhoファミリーやそのエフェクター分子による微小管の再編成の制御機構を明らかにすることを目的としている。申請者はこれまでに、Rhoのエフェクター分子であるRho-kinaseとミオシン脱リン酸化酵素のミオシン結合サブユニット(MBS)が協調してミオシンなどの基質蛋白質のリン酸化レベルを調節することを見出している。 今回、微小管結合蛋白質であるTauとMAP2がMBSに結合すること、Rho-kinaseおよびミオシン脱リン酸化酵素の基質となること、を見出した。Rho-kinaseが、TauのThr245,Thr377,Ser409、およびMAP2のSer1796をリン酸化することを示し、各部位についてリン酸化状態を特異的に認識する抗リン酸化抗体を作製した。Tauはin vitroでチューブリンの重合を促進するが、Rho-kinaseによりリン酸化を受けるとTauのチューブリン重合促進活性が低下した。また、COS7細胞においてTauとRho, Rho-kinaseを共発現させると、TauはRho, Rho-kinase依存的にリン酸化を受けた。さらに、Rho-kinaseによるリン酸化部位をAspに置換した変異型Tauを作製し、in vitroにおいてチューブリン重合促進活性を調べたところ、野生型やリン酸化部位をAlaに置換した変異型に比べてその活性が有意に低下した。また、TauをPC12細胞に導入すると、Cytochalasin(アクチン重合阻害剤)依存的に神経突起の伸長を引き起こすことが知られている。そこで、Asp変異型TauをPC12細胞に導入したところ、突起の伸長が野生型Tauを導入した場合に比べて有意に抑制された。以上の結果より、Rho-kinaseとミオシン脱リン酸化酵素が協調してTauやMAP2のリン酸化レベルを調節し、微小管の再編成を制御している可能性が示された。
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