研究概要 |
ミトコンドリアは融合と分裂を繰り返しながらダイナミックにその形態を変化させている。ミトコンドリアに局在するGTPase、Mitofusin(Mfn)はN末端のGTPaseドメインを細胞質に露出しC末端の疎水性領域に於てミトコンドリア外膜に結合している。哺乳動物細胞では2つのアイソフォームが発現しているが、その機能の詳細は未知であった。本申請者はこれまでにMfn蛋白質はミトコンドリア融合を調節しミトコンドリアの形態制御に関与すること、2つのアイソフォームが異なる組織発現パターンを示すこと、両方がミトコンドリア融合に必須であることを示してきた。 本研究期間に於てさらなる詳細な生化学的解析を行い以下の結果を得た。(1)2つのMfnはGTP加水分解活性を持っていたが、Mfn1はより強い活性を有する(2)Mfn1はミトコンドリア外膜上で約180kDaの複合体を形成しているが、GTP加水分解に依存してさらに大きな複合体(~250kDa,~450kDa)に変化する(3)単離ミトコンドリアを用いたミトコンドリア形態解析系を構築し、Mfn1はミトコンドリア結合を活性化する機能を持つことを示した(4)Mfn1は、GTP加水分解活性に依存して2つのミトコンドリアを介したtrans複合体を形成する。これらの結果からMfn1はGTP加水分解に依存して複合体を形成し、ミトコンドリアを結合させる機能を持っていることが示された。 さらにMfn蛋白質を含む複合体の解析を行った。Mfn1の結合因子を検索し、約55kDaの蛋白質を同定した。この蛋白質は、Mfn蛋白質に依存したミトコンドリア融合反応を抑制的に制御する活性を持つことがわかった。 以上の結果から、2つのMfn蛋白質とその機能制御因子は、ミトコンドリア融合・形態制御に重要な機能を持っていることが明らかになった。
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