Arf6は形質膜を中心とした小胞輸送を制御する低分子量Gタンパク質であり、接着分子であるE-カドヘリンや様々な膜受容体の局在を制御する事により、細胞の運動性や浸潤性を調節すると考えられている。昨年度までに上皮細胞で主に発現する接着分子であるE-カドヘリンだけでなく神経系の細胞で主に発現するN-カドヘリンの細胞内局在性もArf6により制御される事、N-カドヘリンの強制発現によりE-カドヘリンの細胞内への取り込みが促進される事、さらにはこのE-カドヘリンの細胞内への取り込みがArf6の不活性型変異体であるArf6T27Nにより阻害される事等を明らかにした。本年度はN-カドヘリンを発現するアデノウイルスベクターを作製し、一過性に全ての-MDCK細胞にN-カドヘリンを発現させた際のE-カドヘリンの動態を検討した。その結果N-カドヘリンの発現により、ほぼ全てのE-カドヘリンは細胞間接着部位から消失し、細胞内のエンドソーム様の小胞に局在した。しかしながらE-カドヘリンの総蛋白量はウイルス感染前後で大きな差は無く、エンドサイトーシスされたE-カドヘリンは分解経路に輸送されるのでは無く、主にリサイクリング経路に輸送されるものと考えられた。これは、E-カドヘリン小胞がリソソームのマーカーとほとんど共局在しない、という以前得られた結果と一致した。以上の知見を基にGFPなどを利用して生細胞中のE一およびN-カドヘリンの細胞内局在性を検討する事が今後の課題である。
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