研究概要 |
Wntシグナル伝達機構は、初期発生において体軸形成や器官形成を制御するだけでなく、神経細胞の増殖や生存、シナプス分化等に多様な働きを持つ。我々は昨年度までにゼブラフィッシュccd1(coiled-coil DIX 1)を単離し、Ccd1がWntシグナル伝達系(β-catenin経路)を活性化して、神経系のパターン形成に重要な役割を果たすことを示した。 今年度は、まずマウスccd1(Mccd1)、および、ゼブラフィッシュccd2(Zccd2)を単離した。Mccd1遺伝子の構造解析により、Mccd1にはプロモーター領域の使い分けおよびalternative splicingにより、14種類の異なる転写産物が存在し、得られるタンパク質が、2つのサブタイプ1(A,B,C)に分けられる事を明らかにした。このうち、AタイプはActinと相互作用する領域と考えられているCalponin HomologyドメインをN末に持つ新たな構造のタンパク質であった。またZccd2には、A、B両タイプが存在することがわかった。次にこれらのCcdタンパク質の機能を調べるために、Hela細胞に強制発現させて、タンパク質の局在、およびWntシグナル伝達系に与える影響を調べた。その結果、Ccd Aはactin stress fiberと局在が一致すること、Ccd BおよびCcd Cはcytoplasmic vesicleに局在することが明らかになった。またMCcd11タンパク質は、Dvlと共存することでWntシグナル活性をより上昇させる働きがあることが判明した。現在は、Ccd1がDvlやAxin等のリン酸化状態や局在を変化させるかどうか、およびCcd AがActinと結合するかどうかを検討中である。またゼブラフィッシュ胚においてCcd1の強制発現を行い、その表現型を解析することで、Ccd1の生体内での機能を明らかにしようとしている。
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