気管前駆細胞の系におけるfilopodiaの機能を解析するために、Gal4/UAS系を用いて気管系特異的にcdc42のドミナントネガティブ型を発現させたところ、気管前駆細胞の移動に異常が見られた。しかしながらこの実験においては細胞体の形状にも異常が見られたため、filopodiaに特異的な効果であると結論することはできない。ezrinのドミナントネガティブ型(Nature(2003)426:555-)のように、filopodia形成により特異的な遺伝子を用いるべきであると考えられる。細胞体におけるMAPキナーゼの活性化を生体内で検出するためにYanとGFPの融合遺伝子を発現させるベクターを構築し、遺伝子組み換えバエを作成した。これを気管系特異的に発現させたところ、GFPのシグナルは内在性のYanとは全く異なる局在を示した。また、膜結合型FGFのベクターおよび遺伝子組み換えバエを作成したが、FGFがうまく膜にトラップされなかった。一方で、気管系の一部の細胞でのみGal4を発現させるベクターおよび気管系の一部の細胞でのみFGF受容体遺伝子をノックアウトするベクターを構築し、遺伝子組み換えバエを作成したが、これらは期待通りの働きを示した。これらの遺伝学的な道具を用いることにより、FGFシグナルおよびfilopodia形成を阻害された気管前駆細胞がどのような挙動を示すか、生体内で観察することができる。実際、共焦点レーザー顕微鏡を用いて気管前駆細胞の一部をランダムにGFPでラベルし、その細胞体およびfilopodiaの挙動を数時間にわたってtime lapse撮影できることがわかった。
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