申請者らが開発に成功した、twist遺伝子のプロモーターを用いたGFPトランスジェニックメダカ系統では、生きたまま硬節の挙動を観察することが可能である。twist-GFP陽性細胞は胚発生の過程で、予定椎間板領域の脊索周囲に局在するようになり、その局在は成魚の椎間板の周囲においても継続して観察される。透過型電子顕微鏡を用いて超微細構造学的な解析を行ったところ、twist-GFP陽性細胞は立方体もしくは楕円形で、いずれも粗面小胞体に富んでおり、哺乳類における典型的な骨芽細胞の特徴と一致した。これらの結果は、twist-GFP陽性細胞が椎体形成を担う骨芽細胞であり、椎間板領域が椎体形成の場として機能的であることを示唆している。また、脊椎融合の表現型を示す自然発生突然変異体であるダルマメダカとトランスジェニック系統との交配により、twist-GFPトランスジェニック"ダルマ"メダカを作製したところ、椎体同士の融合が認められる予定椎間板領域において、twist-GFPの発現が欠失していることが明らかとなった。この結果は、硬節細胞の椎間板形成への関与を支持するものであり、twist-GFPトランスジェニック系統を用いて、硬節および脊椎に異常を示す突然変異体の単離を行う本実験方法が有効であることを示した。さらに、化学変異剤ENU(N-エチル-N-ニトロソ尿素)を用いて突然変異を誘発し、脊椎形成に関わる突然変異体の単離を行った。その結果、脊椎の分節性が左右でズレが生じる変異体が2系統、脊椎融合を示す変異体を3系統、単離することに成功した。
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