本研究においては、1.クロマチン免疫沈降による標的遺伝子の同定、2.Tandem affinity purification(TAP)による結合タンパク質の同定、3.ES特異的発現の転写制御機構の解析を行う計画であるが、H15年度はこのうち項目2と3を行った。 TAPによる結合蛋白質の同定 プロテインAおよびカルモジュリン結合タンパク質(CBP)の2つのtag(TAP-tag)を融合したECAT4タンパク質をES細胞で発現させ、IgGとカルモジュリンの2種類のビーズによりアフィニティ精製を2回繰り返し、ECAT4タンパク質を含む複合体を精製した。ウェスタンブロットにより精製は確認されたが、銀染色ではバンドを確認することができなかった。今後、洗浄や抽出の条件を検討し、回収率を上げる必要がある。 ES細胞特異的発現の転写制御 またはECAT4遺伝子を含む大腸菌人工染色体(BAC)おり遺伝子の周辺のさまざまな領域をPCRにより単離し、SV40プロモータを持つルシフェラーゼレポーター遺伝子と結合させた。これをES細胞や分化細胞へ導入し、ES細胞特異的なエンハンサー活性を示すDNA断片を同定した。この断片をさらに細分化し、シスエレメントを約200塩基にまで絞った。これ以上に短い断片は活性を失ったことから、複数の転写因子結合部位が存在すると考えられた。各種の欠失変異体や点変異体を作製し、活性に必須の転写因子結合部位の同定を行っている。
|