研究概要 |
本課題は、酵母の転写活性化因子GAL4とそのシス配列UASをもちいたアクティベーションタギング法をモデル植物であるシロイヌナズナに応用し、これによって根のパターン形成に関与する遺伝子群を同定・解析することを目的としている。本年度は、まずタギングベクターの開発をおこない、ついでこれをもちいて実際に形質転換種子プールの作成とスクリーニングを開始した。タギングベクターの開発については、バイナリーベクターのレフトボーダー側に17塩基のUASの5回反復配列を挿入し、その内側に選抜用ハイグロマイシン耐性遺伝子と大腸菌の複製開始点を挿入した。まずこのベクターがアグロバクテリウム中で安定に保持されることをPCR法によって確認した。次にこのアグロバクテリウムをGAL4を発現しているシロイヌナズナ植物に感染させ形質転換体を得た。形質転換効率は1.3%であり、タギング種子プールの作成に十分なものであった。またランダムに選んだ20ラインのゲノムDNAをもとに、挿入UASの近傍配列をクローニングしたところ、ほぼすべてのラインでUASが無傷でゲノム内に挿入されていることが確かめられた。以上によりベクターと形質転換系の開発は達成できたと判断し、実際に種子プールの作成とスクリーニングを開始した。これまでに約6,000ラインの形質転換体を作成し、初代の形質転換体を実体顕微鏡と共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、根の形態やパターニングに異常を示す変異体の候補が約300ライン得られた。次にこれらの中から次の世代に表現系が遺伝するものを42ライン同定した。現在これらのラインで挿入されたUAS近傍遺伝子の同定を進めると同時に、さらに多くの種子プールの作成とスクリーニングを続けている。
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