研究課題
文部科学省在外研究員としてアメリカに滞在していた平成15年8月までの期間に、アメリカ自然史博物館とスミソニアン国立自然史博物館にて、5大陸世界各地域の現代人約400個体、ボルネオとスマトラのオランウータン約100個体、および現存する北京原人の歯の化石資料全ての精密模型を製作し、さらに写真撮影を行った。これらの資料を日本へ持ち帰り、既に自身で集めていたジャワ原人の歯の精密模型などを合わせ、まず肉眼観察によって現代人、原人、オランウータンの歯の形態を比較した。これによって、以下の事項を観察および検討した。・先行研究で指摘されている、現代人の各地域集団間の形態的違いを確認した。さらに、文献に記載のない現代人の各地域集団間の形態的違いを、いくつか発見した。このように現代人の集団内変異を把握するとともに、現代人全体が共有する歯の形態特徴を検討した。・オランウータンの歯形態の個体変異と共有特徴を検討した。・北京原人とジャワ原人の歯の形態の違いについて検討した。・以上の観察の結果をもとに、現代人、オランウータン、原人を歯冠形態で判別する方法を検討した。今後行う分析の方向性を定めるためには、まずこうして全ての資料を見渡し、全体の傾向をつかむ作業が欠かせない。最終的な結論を導くには、なお定量的な分析による裏付けが必要であるが、それぞれの集団の特徴がおおまかに把握され、オランウータンと原人の歯の判別が、従来考えられていたより高い精度で行えるとの見通しを得た。さらにインドネシアのガジャマダ大学へ赴き、当大学所蔵で未発表のジャワ原人の遊離歯化石の観察を行い、これまでに研究して来たジャワ原人の歯の特徴が、これら未調査の資料にも同様に認められることを確認して来た。
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