研究課題
最古のジャワ原人について資料数の充実している下顎骨化石を包括的に解析して、その形態が意外に原始的であることを明らかにし、かつ最古のグループと中期のジャワ原人は形態的にかなり異なることを示した論文が、専門誌に受理され電子出版にて早期公開された。この成果は、ジャワ原人と呼ばれる人類集団が少なくとも年代的に一様ではなかったことを明らかにし、かつその最古のグループが、アフリカからかなり早い時期に移住してきた人類集団の系統を継ぐものであることを示唆している。成果は本年度の日本人類学会の国際シンポジウム、スペインやオーストラリアにおけるセミナーでも発表した。この成果をさらに発展させるねらいではじめた歯形態のさらなる詳細な解析も、本年度までに目標をほぼ達成した。具体的には、現生・化石を含む大きなサンプルに基づいて歯形態の弁別基準を作成し、これまで専門家の間でオランウータンのものかジャワ原人のものか意見が分かれていた、ジャワ島出土の20点ほどの歯化石について、信頼性の高い判定を下すことが出来た。さらにジャワ原人と判定された歯化石について形態の詳細を吟味した結果、下顎骨の解析で得られた結果と同様に、古いジャワ原人の歯化石には原始的な形態が認められることが確認された。これらの成果は、今後おそらくアジア大陸で発見されるであろう原始的な人類の歯化石を吟味する際にも、有効な比較基準となるはずである。さらに本年度には、中国とスペインの研究機関を訪れ、北京原人やヨーロッパの旧人の実物の歯化石を手にとって観察する機会も得られた。これらは本年度の研究には直接組み込まれていないが、今後さらに研究を発展させていく上での土台となるものである。
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Human Evolution 19(3)
ページ: 197-202
American Journal of Physical Anthropology in press