植物が持つ多様な形態の一つは葉である。葉は人の目につきやすいこともあり形態的記載も多くその発生の仕組みについては古くから生理学的・生化学的・発生学的解析など様々な角度からの研究が行われてきた。本研究の第一の目的はイネ科植物で多様な形態を示す葉舌の発生過程を明らかにすることである。本年度はトウモロコシの葉舌発生を制御する転写因子LIGULELESS1遺伝子をイネから単離した(OsLG1)。また、イネとトウモロコシのシンテニーからOsLG1遺伝子の変異と思われるイネの無葉舌変異体(lg1)においてOsLG1遺伝子の変異を検索した。その結果、T-65系統から作出されたlg1変異体ではOsLG1)遺伝子のORFに塩基置換は見あたらなかった。これらの情報は岡山大学の前川らから既に得ていたが、今回の実験で前川らの知見を確認した。また、イントロン-エクソンのジャンクションにも変異は見あたらなかった。次に、lg1変異体と野生型とでOsLG1遺伝子の発現を比較したところ予想通り野生型に対しlg1変異体ではOsLG1遺伝子の発現が抑制されていた。これらの研究からlg1変異体ではOsLG1遺伝子の発現制御領域に変異がある物と予想される。今後はプロモーター領域など発現制御に関わると思われる領域の構造を詳細に解析すると共にDNAの変化を伴わない遺伝的変異、すなわちエピジェネティックアレルである可能性も含めて解析を続ける。また、OsLG1プロモーターによりGUSレポーター遺伝子を発現する形質転換イネも作成したのでOsLG1遺伝子の発現様式も解析する。
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