イネの転移因子mPingを用いたトランスポゾンディスプレイと挿入変異体のDNA解析を行った。実観ではまず、イネの細粒遺伝子slgをホモにもつ系統(細粒系統)に出現した細粒穂と非細粒穂をともにもつ1個体(粒型キメラ個体)を供試して、その細粒型分げつと非細粒型分げつからそれぞれDNAを抽出し、これを制限酵素Csp6 Iで消化した後、消化されたDNA断片の両端にCsp6 Iアダプターを取り付けた。ついで、これを鋳型としてmPingの3'端に近い内部配列とCsp6 Iアダプターの相補配列とをプライマーとするPCRを行い、mPing挿入部位に隣接するDNA断片を増幅した。さらに、得られたPCR産物のサイズを測定し、細粒型分げつ-非細粒型分与ずつ間でDNA長に関する多型を調査した。 調査の結果、少なくとも9つの多型バンドが検出され、このうちの2つについて、DNAを回収して塩基配列を決定したところ、それぞれ、第4染色体と第6染色体にmPingが新たに挿入されていることが明らかになった。 一方で、mPingの転移による新たな有用変異の誘発を期待して、外観上容易に判別のできる劣性遺伝子ghをもつ細粒系統を圃場に栽植し、系統毎に栽培特性の調査とghをホモにもつ非細粒個体(gh/gh、slg/+)の出現について調査を行った。調査の結果、突然変異体シリーズの作成に適した1系統を選抜するとともに、数個体のghホモ型非細粒個体を獲得した。
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