イネの転移因子mPingの活発な転移を利用したノックアウト遺伝子の効率的クローニング法の開発を目指して、本年度は、mPingの転移によって誘発された突然変異体の個体別次代系統を供試して、誘発変異と共分離するmPingコピーをトランスポゾンディスプレイ法によって探索した。 まず、mPingが活発に転移する系統に出現した突然変異体9個体の個体別次代系統を圃場に展開したところ、このうちの2系統で穎果の形(粒型)および脱粒性に関する分離が認められた。そこで、この2系統の全個体から個体別に抽出したDNAを鋳型に用いて、mPingの挿入多型を検出するため、トランスポゾンディスプレイを行った。その結果、供試個体内にはおよそ100コピーのmPingが存在し、そのうちのいくつかではmPingの転移による挿入多型が認められた。観察された全てのmPing挿入多型について、多型の有無と粒型あるいは脱粒性の表現型との関連を調べたところ、粒型には182bpのPCR増幅断片を生じるmPingコピーが、脱粒性には117bpのPCR増幅断片を生じるmPingコピーがそれぞれ関連することが示された。 このように、トランスポゾンディスプレイによって、ゲノム内に散在する多数のmPingコピーの中から、誘発突然変異の原因遺伝子内部あるいはその調節領域に挿入されているmPingコピーを分離・同定できることが示された。今後は、分離された多型バンドからDNAを回収し、粒型および脱粒性に関する遺伝子のクローニングを進める予定である。
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