研究概要 |
早生品種を早期に育成するためには早生遺伝子型の効率的な選抜技術が不可欠であることから、これまでの知見を生かし、北方型フリント種の早生性の鍵となる遺伝子について遺伝子型を識別できる遺伝子診断マーカーを開発を目指す。 これまでに、Thornsberryら(2001)のAssociation studyにより開花期との関連が示唆されたd8遺伝子内変異がトウモロコシ早生系統に多く見られることを確認した。本年度は、このd8遺伝子内変異を識別する挿入欠失変異(InDel)マーカーの早生性の遺伝子診断への利用を検証するため、d8遺伝子内変異を晩生系統に導入した準同質遺伝子系統による遺伝解析を行った。 準同質遺伝子系統2系統(d8-1,d8-2)の早生系統ゲノム領域を調査した結果、それぞれd8遺伝子近傍領域62.2cMおよび5.3cM保有していた。特に、d8-2の導入されたゲノム領域は、物理地図で約1.2Mbp以下と、ゲノムの99.94%が戻し交配親由来ゲノム領域であった。d8-1およびd8-2に戻し交配親を交配した交雑後代集団において、d8遺伝子内変異と開花期との関係を単純線形回帰分析により解析した結果、いずれの集団においてもd8遺伝子内変異と開花期の間に有意な関係は認められなかった。 Thornsberryら(2001)は、Association studyによりこのd8遺伝子内変異が、7〜11日の開花期の差と関係し、選抜マーカーへの利用が可能であると報告している。しかし、本研究からは、Thornsberryら(2001)の結果を裏付ける結果は得られなかった。2005年以降、Thornsberryら(2001)の結果について、別集団を用いたAssociation studyによる検証が行われているが、明確な結果が得られず、準同質遺伝子系統による検証が必要とされていた。本研究は、Association studyによる結果を準同質遺伝子系統による遺伝解析で検証した初めての事例である。今後、このd8遺伝子内変異がAssociation studyにより開花期との関係が示唆された原因を解明することは、Association studyを実施するうえで有用な知見を提供できると考えられる。
|