本年度においては、下記の通り本課題を進展させるために有用な知見と改良点が得られた。 タロイモ類は、根から根圏へアルミニウムイオンをキレートする蓚酸を分泌することでアルミニウムの毒性を回避していることが示唆されている。本研究で供試した各サトイモ品種の根の皮層では、発達した蓚酸カルシウムの結晶体を形成する異型細胞が多数存在する基本的形質が示された。これらの異型細胞において蓚酸の合成場所と考えられているプラスチドは、アルミニウム処理により対照区と比較して微細構造的差異が顕著に観察された。また、蓚酸カルシウム結晶体の形成は、アルミニウム処理により対照区と比較して抑制されることが認められた。根に多数存在する異型細胞は、蓚酸の合成に関与し、酸性土壌耐性に寄与している可能性が本研究から見出された。 また、根におけるアルミニウムイオンの局在を検出する上で、急速凍結-真空凍結乾燥法とX線分析法を組み合わせる手法の確立を検討した。その結果、この手法は、微細構造レベルに至るアルミニウム局在の調査をする上で有効であることが判明した。 さらに本年度では、アルミニウム処理がサトイモの根における蓚酸の分泌程度へ及ぼす影響に関する調査を試みた。しかしながら、計測機器の不具合もあり有用な結果は得られなかった。計測機器を調整した後、放射線同位体^<14>Cを用いた蓚酸を含む有機酸の局在場所の特定と共に来年度も引き続き調査の進行を図る予定である。
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