研究概要 |
平成16年度の研究実績は以下のとおりである. 1)形質転換技術の確立 アグロバクテリムを介する方法を適用した.まず花器浸潤法,及び培養細胞を用いる方法を試みたがいずれも形質転換体が得られなかった.そこで子葉節にアグロバクテリウムを感染させる方法を試みることにし,まず再分化法を確立した.4種類のサイトカイニンを試したところ,チジアズロンが最も有効であることがわかった.これを元にアグロバクテリムの感染・除菌条件,及び再分化条件をさらに詳細に検討し,形質転換された完全個体を得ることに初めて成功した. 2)塩ストレスにともなう光合成の変換に及ぼす活性酸素の影響 ストレス環境下で発生するとされる活性酸素がアイスプラントのCAM化にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするために,塩処理にともなう過酸化水素の含量,活性酸素消去系関連酵素の活性,CAM化関連遺伝子の発現量,CAMの指標である葉内酸度,及び活性酸素消去物質(グルタチオン)の含量等を測定した.その結果,過酸化水素含量はCAM化に先んじて増加し,ついでグルタチオン含量が徐々に増加すること,またそれに付随してCAM化関連遺伝子の発現が増加することが明らかになった.また活性酸素消去系酵素の活性を測定したところ,スーパーオキシドデスムターゼ,アスコルビン酸ペルオキシダーゼ,及びグルタチオンレダクターゼの活性は増加したが,カタラーゼ活性は逆に低下することがわかった.さらに阻害剤実験によって過酸化水素とグルタチオンがCAM化に強く関与することを明らかにした. 以上のように,今年度は当初の計画どおり研究を進展させることができた.
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