単離した卵細胞と精細胞を人工的に受精させる『試験管内受精』技術をアルストロメリアに応用するために、卵細胞および精細胞の単離・回収方法の検討を行った。 卵細胞単離のために、胚珠の酵素処理とガラス針による解剖を行った。酵素処理に供する前の胚珠の珠孔または珠心組織の切除方法の検討と、最適な酵素液組成の検索を行い、ガラス針による胚珠の解剖により卵細胞の単離に成功した。単離した卵細胞は、マイクロポンプに接続したガラスキャピラリー(ナノスポイト)により回収することができた。 DAPIによる花粉の核染色を行ったところ、アルストロメリアは二核性花粉を持つことが分かった。二核性花粉から精細胞を単離するためには、花粉管を伸長させ、さらに花粉管内で雄原細胞から精細胞を形成させる必要がある。そこで、花粉管発芽に適した人工培地の組成を検討した。その結果、0.01% H_3BO_3、0.01% CaCl_2、0.0007% KH_2PO_4、10% sucrose、0.1% yeast extractを添加した培地が、発芽率および花粉管の伸長速度において優れていることが分かり、特にyeast extractの添加が花粉管伸長に効果的であることが示唆された。また、DAPI染色によって経時的に花粉管を観察した結果、精細胞が形成されるのは培養18〜20時間後と推測された。 精細胞を単離するためにガラス針による花粉管のマイクロダイセクションを行った結果、2つの精細胞を識別して単離することに成功した。花粉管の先端側に位置していた精細胞は花粉側に位置していた精細胞より蛍光強度が強いことが観察された。今後は単離した精細胞の活性を確認し、2つの精細胞における形態的差異の解析を進めると同時に、遺伝子発現の差異についても解析を試みる予定である。
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