研究概要 |
東京近郊についての,行政界,地形・地質・植生等の土地的自然的データを収集し,地理情報システム(GIS)を用いた環境データベースを開発した。同時に,人口・土地利用・雇用状況等の社会経済的データの収集を進め,行政界毎に収集されるこれらのデータをGIS上で前記の環境データベースとリンクさせた。さらに,関連する土地利用法制度をデータベースに統合した。また,都市化に関する文献,社会経済状況の変遷に関する文献等を収集し,整理した。得られたデータベースを用いて,東京近郊での都市化の特徴と土地利用・土地被覆の変化について考察した。 以上の分析を踏まえて,特に1960年代以降に都市化に伴う土地利用変化が著しかった埼玉県所沢市周辺をケーススタディの対象地区として選定した。市の農業委員会の協力を得て,同市中富地区の農地の放棄状態について現地調査を行うとともに,所有者・耕作者へインタビューを行い,放棄期間・要因を加味した耕作放棄農地の分布図を作成した。さらに1960年代以降の農業センサスデータから農業形態の変化との関連性についても考察を進めた。その結果,農地所有者の居住地が農業形態に大きく影響しており,そのことが耕作放棄地の増大に繋がっていること,耕作放棄には数年で耕作状態に戻るものと放棄が将来的にも続くことが予想されるものの二つの形態があること,などが明らかになった。これらについては,農村計画学会論文集(2003)において発表を行った。以上の知見を踏まえた上で,リモートセンシングを用いて耕作放棄地の発生を広範囲に分析するために,中富地区の耕作放棄地について放棄の期間,要因,永続性についてタイプ分けを行い,タイプごとにスペクトルメーターを用いて,反射スペクトル特性を調査した。
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