研究概要 |
短期間に多くのキュウリ果実を収穫するためには,主枝に多くの雌花を着ける品種が有効と思われるが,多雌花性キュウリでは多くの果実が同時に着果すると,一部の果実が落果する競合とよばれる現象が起きる(Hikosaka・Sugiyama,2004).そこで本研究では複数の果実間での乾物分配が不均一になるメカニズムを解明するため,単為結果性ですべての節に雌花が着生する全雌花性キュウリ品種を用いて実験を行った. 本年度は主枝に着果した複数の果実について開花後の肥大パターンを詳細に調査し,肥大する果実と一時的に肥大が停止する果実,肥大が停止したまま落果する果実を安定して再現できる「節間での果実間競合モデル」を構築した.この競合モデルから,一時的に肥大を停止した果実は,先に開花・肥大した果実を収穫すると肥大を再開するという関係が示唆された(Hikosaka・Sugiyama,2003).そこで先に開花した果実を摘果する時期を変えた実験を行い,肥大中の果実が後から開花した果実の肥大を抑制している可能性が高いことを確認した.またこの実験から,肥大を停止した果実は開花後約10日以内に先に肥大している果実を摘果することで肥大を再開できることが明らかとなった(投稿中).さらにこのモデルを利用して,開花時にすべての花柄にオーキシン,ジベレリン,サイトカイニン,オーキシン極性輸送阻害剤などの植物ホルモンを施与し,落果や果実間競合を軽減できるかどうか検討した.その結果,サイトカイニン処理区では対照区に比べて落果率が低く,収量が高かった.また,サイトカイニン処理区では果柄が他の処理区よりも太くなり,このことが落果率の軽減と何らかの関連があるか,現在,果柄組織を形態的に調査している.今後,肥大した果実と肥大停止した果実における遺伝子発現の差異を明らかにし,果実間の相互作用がどのようなシグナルや経路を介して行われているのか検討する予定である.
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