本研究では、切りバラ花弁における糖代謝酵素と花弁細胞の肥大生長との関連明らかにするため、糖代謝関連酵素の活性変動およびデンプン・可溶性糖含量の変動を調べた。バラ'プリティーウーマン'を一般的な収穫ステージで採取し、1日の水揚げ後に一部のバラ(処理0日区)の花弁を採取した。残りのバラは水および30g/Lスクロースの液につけ2日間処理(水2日区およびスクロース2日区)をし、花弁を採取した。切りバラ花弁の新鮮重は2日間の両処理区で0.5g程増加した。2日間の両処理区でグルコース含量は多少減少しフルクトース含量はわずかに増加していた。一方スクロース含量はどの花弁においてもわずかしか検出されなかったが、スクロース処理区では他の処理区と比べ2倍程度まで増加していた。デンプン含量は2日の両処理で著しく減少していたが、両処理区間で際立った差は見られなかった。つぼみの開花速度は、2日間のスクロース処理では水処理区と変わらなかった。これは、スクロース処理により花弁中のスクロース含量は増加するが、単糖の蓄積には影響していないことが原因であると考えられた。アミラーゼ活性は水2日区で著しく増加していた。インベルターゼ活性は特にスクロース2日区で増加していた。'プリティーウーマン'は一般的な収穫ステージまでに花弁中にデンプンを蓄積しており、切り花にして光合成産物の転流量が抑制されると、アミラーゼ活性を増加させデンプンを分解し呼吸基質であるグルコースを生産しているものと考えられた。一方切り花にスクロースを処理すると、主にインベルターゼによってスクロースを分解しているものと思われた。スクロース処理でもデンプンは分解されているが、アミラーゼではなく別の分解経路によるものの可能性が示唆された。今後は花弁のサンプルステージの幅を広げ、また開花速度の異なるバラ品種をも用いて研究を進めていく予定である。
|