筆者は、キク(Dendranthema grandiflorum'ピアト'(夏秋ギク)はキクスタントウイロイド(CSVd)に感染すると、長日条件下であっても発らい・開花することを見いだした。本研究は、ウイロイドが機能性RNAとして植物の生態反応を撹乱する可能性を明らかにするものである。本年度は以下の3点に絞って研究を行い、それぞれの成果を上げることができた。 1.超微小茎頂分裂組織からの植物体の再生とCSVdフリー株の選抜 超微小茎頂分裂組織のキャベツ根への移植培養により植物体を再生させることができた。RT-PCRとnested PCRを用いて、再生植物体を完全フリー株、低保毒株、高保毒株に分類した。CSVdフリー株の作出は通常の茎頂培養法ではほとんど不可能であるが、本研究ではCSVdフリー株を得ることができた。これらの3種類の植物体を暗期中断による長日条件下で栽培し、CSVdの感染が'ピアト'の開花に与える影響を調べた。 2.CSVdフリー植物の長日下での開花反応 暗期中断下ではCSVd高保毒株は全て開花した。CSVdフリー株、低保毒株では一部に柳芽の発生などが見られたが、栄養成長を続けた。CSVdフリー株と低保毒株の生育には違いが見られなかった。 3.接ぎ木によるCSVdの再接種 接ぎ木によってCSVdを再接種した'ピアト'は、暗期中断下でも開花したことから、CSVdが日長反応を撹乱させる要因であることを確認した。なお、'ステッツマン'(秋ギク)などにCSVdを接種しても開花反応に乱れは見られないことを確認し、比較品種として今後利用する予定である。
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