研究概要 |
セイヨウナシは同じナシ亜科のニホンナシやリンゴと同様に1遺伝子座複対立遺伝子系に制御される配偶体型自家不和合性を示す。セイヨウナシは単為結果性を有し、結実率による判定が難しく、S遺伝子型は決定されていない。我々は、セイヨウナシの雌しべ側S遺伝子産物もS-RNaseであるとの仮定に基づき、RT-PCRにより6つのS-RNase cDNA断片(S1〜S6-RNase)を同定し、12品種のS遺伝子型を推定している。 本年度は,'プレコース'からRT-PCRにより新規S-RNase cDNA断片(S7-RNase)をクローニングした。S1〜S7-RNaseを有する6品種から3'及び5'RACEによりS1〜S7-RNase cDNAの完全長塩基配列を決定した。S1〜S7-RNaseの推定アミノ酸配列は、ナシ亜科S-RNaseに典型的な構造(5つの保存領域、1つの超可変(HV)領域、2つのヒスチジン残基、8つのシステイン残基)を有していた。セイヨウナシS2-RNaseとリンゴS5-RNaseは98.3%の高い相同性を有し、HV領域の配列は完全に一致していた。 ゲノミックPCRによりS-RNase断片を増幅し、S1〜S7-RNase cDNA断片との対応付けを行った。S2-RNase断片は約1.5kb、S1-RNase断片は約1.3kb、S5-RNase断片は約1.0kb、S6-RNase断片は約400bp、S3-,S4-,S7-RNase断片は約350bpに検出された。また、3品種からS1〜S7-RNaseと異なる新規のS8〜S11-RNaseが増幅された。 除雄無受粉、自家受粉、他家受粉を行ない、結実率と充実種子数を調査した。単為結果性の影響を排除したSeeds/Flower(総充実種子数/交配花数)を指標とする判定方法を考案した。
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