研究概要 |
[目的]ウィスコンシン大USDA-ARSのHaveyらは,TIGR(The Institute for Genomic Research)と共に,タマネギcDNAの大量塩基配列解析を伴うEST配列情報のデータベース化を実行している。この膨大なデータを利用してマッピングを効率的に行うためには,適当な遺伝学的基準による情報整理が必要である。我々は,この種の情報整理に有効なツールとして,「シャロット(A. cepa L. Aggregatum group)の染色体をもつネギの単一異種染毎体添加系統シリーズ(添加系統シリーズ)」を保有しており,カタログ化されたEST配列を染色体ごとに整理することが可能である。本研究の目的は,添加系統シリーズを用いてタマネギEST配列情報に基いて作成したDNAマーカーの座乗染色体を明らかにしていくことにある。 [材料および方法]シャロット'チェンマイ',ネギ'九条'および添加系統シリーズの葉身からvan Heusden(2000)らの方法により全DNAを抽出した。次に,ゲノミックサザン解析により単一コピー配列と推定された62種類のEST配列を基に設計したSTSプライマーセットを用いてfirst PCRを行った。このfirst PCR産物を50倍希釈したものを鋳型としてnested PCRを行い,2%アガロースゲル電気泳動により増幅および多型性の確認を行った。多型検出感度を向上させるため,7M尿素を含む5%ポリアクリルアミドゲル(変性ゲル)で電気泳動し,銀染色によりDNAバンドを検出した。さらに,上記分析で多型が観察できないプライマーセットに関しては,SSCP分析による多型検出を試みた。 [結果および考察]62種類のプライマーセットについてnested PCRを行った結果,46種類において,シャロットおよびネギでバンドの増幅が確認された。次に,これらのPCR産物を変性ゲルおよびSSCPゲルで電気泳動した結果,前者にて21種類のプライマーセットで、また,後者にて5種類でそれぞれ種間多型性が確認された。さらに、添加系統シリーズを分析したところ,26種類のESTマーカーの座乗染色体を決定することができた。これらの中のいくつかは既にタマネギ高密度遺伝子地図中にマッピングされており,本研究で得られた情報は各連鎖群が対応する染色体を解明していく上で重要な手がかりを与えることになった。今後,タマネギ染色体地図の完成へ向けて、さらに多くのESTマーカーについて同様の解析を行っていく予定である。
|