研究概要 |
食用ハス(レンコン)の肥大茎形成に関わる環境要因と外与の植物ホルモン処理が茎肥大に及ぼす影響について調査を行った. まずはじめに食用ハス実生を異なる日長条件で栽培したところ,13時間以上の日長では地下茎が伸長したのに対し,12時間以下の日長では地下茎が肥大した.このことから,肥大茎形成のための限界日長は12〜13時間の範囲にあることが明らかになった.また,短日条件下における光中断処理を行った場合,肥大茎形成が認められなかったことから,食用ハスの肥大茎形成は短日植物の開花反応と同様の日長反応性を有することが明らかになった.さらに,短日条件で肥大茎を形成させた後,長日条件下で栽培すると,日長移行の約2週間後から地下茎が再伸長することが分かり,肥大茎形成開始後の地下茎の肥大は日長とは無関係に続くのではなく,日長に支配されていることが明らかになった.つまり,地下茎の肥大・伸長は常に日長に影響を受ける可塑的な反応であるといえる. 肥大茎形成(短日)条件下における外与のジベレリン処理,ならびに肥大茎非形成(長日)条件下における外与のジベレリン生合成阻害剤(ウニコナゾール,パクロブトラゾール)処理を行ったところ,前者では肥大茎の形成が見られず,地下茎へのデンプンの蓄積が見られなかったのに対し,後者では肥大茎が形成され,デンプンの蓄積が見られた.この結果から,食用ハスにおける肥大茎形成の制御にはジベレリンが関与している可能性が強く示唆された.
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