研究概要 |
食用ハス(レンコン)における促成栽培を安定化させるとともに,ハスにおける休眠の意義について明らかにすることを最終的な目的として,実生を用いたコンパクトな実験系を利用した食用ハス肥大茎形成の要因,特に日長反応性の解明と植物ホルモンによる影響について検討を行った. 前年度までの実験で,肥大茎形成は短日によって促進され,その限界日長は12〜13時間の範囲にあることを明らかにし,さらに,短日条件下における白色光による光中断処理を行った場合,肥大茎形成が認められないことを明らかにしている.本年度は,短日条件下における光中断の光質の影響について調査した.光中断のない短日処理(対照)と,白,青,緑,黄,赤,遠赤色光の異なる光質による2時間の光中断処理を行ったところ,白,黄,赤色光で光中断処理した場合には地下茎の肥大が見られず,すべて伸長していたのに対し,対照ならびに青,緑,遠赤色光で光中断処理した場合には,地下茎が肥大した.このうち,遠赤色光で光中断した場合には,対照区よりも低節位から肥大茎を形成し始めた. Arabidopsisの種子発芽現象には,フィトクロムB(PhyB)が関与していることが知られており,黄〜赤色の光を感受していることが報告されている.本実験の結果,食用ハスの肥大茎形成に関する日長反応性には,黄〜赤色光の光質が重要であることが明らかになったことから,食用ハスの肥大茎形成においてもPhyBの関与の可能性が示唆された.
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