エチレンは果実の成熟・老化を促進させるため、果実の鮮度を保持するためには、その作用を抑制させる必要がある。1-MCPはエチレン受容体に作用する強力なエチレン作用阻害剤であるが、その効力が樹種によって異なることが報告されており、本剤によるエチレン作用阻害機構について分子レベルでの解明が求められている。昨年度の研究結果より、1-MCP効果による鮮度保持効果が高いリンゴ果実では、1-MCP処理後エチレン情報伝達系を負に制御しているエチレン受容体が蓄積していることが明らかとなった。そこで、今年度は1-MCPの効果が低いモモ果実を用いて解析した。 1-MCP処理したモモ‘あかつき'の果肉硬度は、収穫3日後まではやや高い傾向を示したが、5日後には無処理区と同じレベルに低下した。また、エチレン生成量は、1-MCP処理した果実において処理2日後に一過的な増加を示したことから、処理後1〜3日までは、硬度、エチレン生成量とも1-MCPの影響を受けていると推測された。従って、モモにおける1-MCP効果が低い原因として、エチレン受容体と1-MCPの親和性が低いという理由は当てはまらないと考えられた。モモよりエチレン受容体遺伝子Pp-ETR1およびPp-ERS1を単離し、1-MCP処理した収穫後果実における発現様式を解析したところ、無処理区および1-MCP処理区においてPp-ETR1及び年Pp-ERS1の発現量は大きな変化を示さなかったことから、エチレン受容体の発現制御において、モモではリンゴほどエチレンの影響を受けないと推測された。 1-MCP処理期のエチレン生成量が、1-MCP効果に影響を及ぼす可能性が考えられたが、リンゴ果実では収穫直後ならばエチレン生成量が多い場合でも、1-MCPの効果は高いことが明らかとなった。
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