リンゴクロロティックリーフスポットウイルス(ACLSV)のウイルス細胞間移行タンパク質(50KP)を発現する形質転換植物は、自身のウイルス感染に対して抵抗性を示さないが、同じトリコウイルス属で別種のブドウえそ果ウイルス(GINV)の感染に対してのみ特異的に強い抵抗性を示すことを明らかにしている。この様な植物ウイルスの細胞間移行タンパク質を発現する形質転換植物が同属で別種ウイルスのみに抵抗性を引き起こすという報告はこれまで世界的になく、そのウイルス抵抗性機構の解明が期待される。これまで、50KPと39KPは互いに細胞間移行を阻害し合うこと、そして、両タンパク質は細胞室内の同じ場所に不定形の凝集物として存在することを明らかにしている。これらから、50KPと39KPは細胞間移行に必須な標的となるタンパク質などが同じであるため、プラズモデスマータへ局在の途中に両タンパク質が出会い、直接あるは間接的に結合、その結果、両タンパク質を含む不定形の凝集物が細胞内に形成されることで機能的に阻害されると考えることができる。本年度、免疫沈降法により50KPと39KP間の結合を解析した。 50KPと30KPをそれぞれ大腸菌体内で発現させたところ不溶性画分として検出された。そのため、両タンパク質を尿素で可溶化後、再生させて研究に用いた。両タンパク質が、機能を保持した状態で再生されたかについて核酸結合能を指標にした。そして、再生後の両タンパク質は核酸結合能を持つことを証明した。両タンパク質を混合、39KPに対する抗体を加え静置後、 ProteinA/Gビーズに39KP抗体を結合させ、50KPが共沈してくるか解析した。ウエスタンブロッティング法で解析した結果、共沈物中に50KPが検出され、50KPと39KP間の結合が示唆された。現在、BIAcoreをもちいて50KPと39KP間の結合を確認している。
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