リンゴクロロティックリーフスポットウイルスのウイルス細胞間移行タンパク質(MP)を発現する形質転換植物は、自身のウイルス感染に対して抵抗性を示さないが、同じトリコウイルス属で別種のブドウえそ果ウイルスの感染に対してのみ特異的に強い抵抗性を示す。研究計画は、植物ウイルスの細胞間移行タンパク質を発現する形質転換植物がどの様にして同属で異種ウイルスのみに抵抗性を示すのか解明することを目的とした。 これまでの研究で、リンゴクロロティックリーフスポットウイルス(ACLSV)のMPが、ブドウえそ果ウイルス(GINV)のMPは互いに細胞間移行を阻害し合うことを明らかにした。そして、ACLSV MPのディレーションミュータントを作製して、GINVのMPの細胞間移行を阻害する領域を特定した。そして、GINV MPの細胞間移行を阻害する領域を含むACLSV MPのディレーションミュータントを発現する形質転換植物は、GINVに対して抵抗性を示すことを証明した。また、ACLSV MPとGINV MPが互いに細胞間移行阻害を引き起こすと細胞質内の同じ場所に不定形の凝集物として存在することを明らかにした。このことから、ACLSV MPとGINV MPは、細胞間移行に必須な標的となるタンパク質が同じであるため、両タンパク質がプラズモデスマータへ局在の途中に出会い、直接あるは間接的に結合することで両タンパク質を含む不定形の凝集物が細胞内に形成され、機能阻害を起こすと仮説を立てた。これを証明するため、免疫沈降法によりACLSV MPがGINV MPと結合することを確認した。これら最新のデータに関しては2005年8月アメリカのサンフランシスコで開催された国際ウイルス学会にて発表した。
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