ニューファンドランド島(カナダ)において、カルミア(Kalmia angustifolia)、ブルーベリー(Vaccinium angustifolium)、ロドーラ(Rhododendron canadense (L.) Torr.)、日本国内において、シャクナゲ(Rododendron degronianum)、アセビ(Pieris japonica D.DON)またその直下の土壌試料を採取した。カルミアの茎葉部500gからはグラヤノトキシンIを各種クロマトグラフィーと再結晶から単離し各種スペクトル分析を用いて200mg単離した。 植物試料とその直下の土壌(O層)中のグラヤノトキシンを測定した結果、水溶性もしくは総含量ともに下層に行くに従って減少する傾向が認められた。各植物の茎葉部のグラヤノトキシン含量は、カルミア、ロドーラ、ブルーベリー、ツルコケモモ、シャクナゲ、アセビの順に多かった。最も多いカルミア中のグラヤノトキシン含量は水溶性で12mgkg^<-1>、総含量で129mgkg^<-1>であった。アセビの場合、体重の0.1%の摂取により中毒が起こると報告されているが、カルミア、シャクナゲの自生下の土壌中のグラヤノトキシン含量はこれの100倍程度であり、カルミアやシャクナゲ植生下における土壌には、中毒を起こすのに十分なグラヤノトキシン含量が存在することが確認された。 一方、各種試料の水浸透抽出物のクロトウヒ葉植物成長阻害を測定したところ、グラヤノトキシン含量、総フェノール含量と高い正の相関関係が認められ、土壌中においても、これらの化合物が植物の生育に阻害を示すことが示唆された。
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