研究概要 |
本研究では高窒素固定能ダイズ根粒菌の有効利用を増進するために高窒素固定能菌の迅速なスクリーニング法の確立、ならびに高窒素固定能菌の実用的接種菌濃度での土着根粒菌に対する競合能を強化し、接種効率の増進を図ることを目的とした研究を進めている。血清型の異なるダイズ根粒菌20菌株を対象に16S rDNAの塩基配列および16S-23S rDNA Internal Transcribed Spacer (ITS)領域の塩基配列に着目し多型解析を行った。さらにヒドロゲナーゼ(hup)遺伝子の部分塩基配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーションの結果、hup遺伝子保有菌株は共通のITS遺伝子多型を示すことが明らかとなった。このことにより高窒素固定能菌のスクリーニングにITS多型を利用できることが明らかとなった。加えて、土着根粒菌を解析する際にITS多型が有用な指標となり得ることを示した。これを元に日本各地の土壌よりダイズ根粒菌を分離し、ITS多型を利用して分布解析を行ったところ、その分布に明らかな傾向を見出した。このことはダイズ栽培における高窒素固定能菌の接種の際、日本各地で競合対象菌株が異なることを示唆している。さらに高窒素固定能を有する接種根粒菌とその他の根粒菌との競合および根圏中での生態学的知見を含む接種根粒菌の根圏定着のメカニズムに関する知見を得るため、ヒドロゲナーゼオペロンを有する高窒素固定能菌(B.japonicum USDA 110株,USDA122株)とその他の根粒菌とをRj遺伝子型の異なるダイズに対して接種試験を行い、根粒占有率と根粒の空間配置を解析したところ、条件を同一にする限り、USDA 110株はいずれの競合菌株よりも高い根粒占有率を示し、根粒の着生部位は根の基部周辺に偏ることを確認した。この結果は、高窒素固定能菌の接種技術の改善によって根粒占有率を上げることが可能であると判断された。
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