本年度(平成16年度)の研究では、インドネシア発酵食品由来の有用微生物(抗菌物質生産菌)の再スクリーニングを行った。すなわち、伝統的なエビ発酵食品テラシ等に由来する抗菌物質生産菌候補株(昨年度(平成15年度)の研究で分離)約200株を供試菌株とし、Lactobacillus属、Lactococcus属等の乳酸菌やListeria monocytogenesなどの食中毒菌を指示菌として抗菌物質生産菌の絞り込みを進めた。その結果、得られた15株の示す抗菌スペクトルは様々であり、乳酸菌に対する抗菌性が多く観察された。また、L.monocytogenesに対して抗菌性を示す株が得られ、この株がグラム陽性桿菌であり、食塩25%の存在下で増殖可能な好塩細菌であることが判明した。本株は、16S rRNA遺伝子の解析からビルジバチルス属の細菌と同定された。また、その抗菌活性は振とう培養でのみ検出され、培養上清の限外ろ過による結果から、分子量5万以上の抗菌物質を生産していると示唆された。これらの結果は平成16年度日本農芸化学会において発表した。現在、本物質の精製を進めその性状の解析を進めており、今後、食品への添加試験も行い、食品の品質保持にどのように貢献できるかどうかについて検討する計画である。 また、アジア発酵食品の有用微生物のひとつである好塩性乳酸菌Tetragenococcus属の有機酸による微生物制御についての基礎的検討も行った。好塩性乳酸菌の培養条件とその乳酸産生の関係について焦点をあてて検討したところ、Tetragenococcus属細菌2種間において、低pH、高食塩に対する感受性に大きな相違が有ることを明らかとなったので、その結果をJournal of Applied Microbiology誌に公表した。
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