研究課題
本年度はまず、研究対象としている超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1株の水素生産能力に関する基本評価を行った。培養は人工海水塩、酵母エキス、トリプトンを含む基本培地にピルビン酸を加えた培地を用いた。これまでの培養槽(容積3〜10L)を用いた連続培養実験では、生育安定時の菌体密度や代謝産物の定量結果に関して培養ごとのばらつきが大きく、再現性を欠く結果を得ることが多かった。しかしながら今回、導入した小スケール(容積1L)の培養槽により、培養ごとの測定値の誤差範囲がおおむね5%以内に収まることが判明し、安定した連続培養実験を行うことが可能となった。また基本培地にデンプンを加えた培養においても、連続培養の供給側において高分子基質であるデンプンが沈殿してしまう問題があった。デンプンの固化を防ぐために培地を保温すると、今度は培地の劣化による菌体密度の低下が観察された。そこで酵素処理により低分子化を行ったマルトデキストリンを基質に使用することで、沈殿の生成を抑制し、かつ菌体の生育に影響を与えることなく、安定した連続培養を行うことが可能となった。同時に、遺伝子組換え系を利用した水素大量生産株の分子育種にも着手している。既に遺伝子工学的に細胞質局在型ヒドロゲナーゼ遺伝子を増強した株の作成を終了している。またT.kodakaraensisは培養液中にアラニンを生成することが判明しているが、発生した水素の一部は、アラニン生成のための還元力として利用されている可能性が示唆されていた。そこで本菌株のアラニン生成反応に関与するアラニンアミノトランスフェラーゼ遺伝子の破壊株を作成した。これらの破壊株についての基本特性や水素生産量の測定を現在行っている。最後に、T.kodakaraensisの水素生産に関する第一報を現在投稿中である。
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