生体内にはチアミン、ビオチン、リポ酸など硫黄原子を有する補酵素・補因子が多数存在している。しかしながら、これらの生合成機構に関しては未解明な点が多く残されている。これまでに、システインを基質としてアラニンに分解する反応を触媒するシステインデスルフラーゼが、酵素内保持型のペルスルフィドを生成し、それを種々の含硫化合物の生合成に利用していることが示唆されている。そこで本研究では、含硫補因子の生合成系の解明を目指し、ペルスルフィドの保持能を有するタンパク質の網羅的検出と同定を行った。昨年度までの報告の通り、これまでに大腸菌MG1655の無細胞抽出液にペルスルフィド保持能を有する3種の未同定タンパク質(70kDa、40kDa、25kDa)を見いだした。システイン由来の^<35>Sによる標識は、いずれのタンパク質に関しても還元剤処理により消失するため、ペルスルフィドもしくは類似の形態でタンパク質内に保持されているものと期待された。これらのタンパクの一次構造を明らかにするために、調製的二次元電気泳動を行い、プロテインシークエンサーによるN末端および内部のアミノ酸配列解析を行った。また平行して、ペプチドフィンガーマッピング法にて解析を行って当該タンパク質の同定を試みた。しかしながら、これらのタンパク質はいずれも発現量が微量であったため、同定には至っていない。硫黄制限培地にて大腸菌を培養し無細胞抽出液を調製して同様の実験を行うと、当該タンパク質の発現量が増大することが明らかになったため、さらに条件を検討してペルスルフィド保持能を有するタンパク質の同定を目指している。
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