研究課題
平成16年度は、イネいもち病菌の二つのヒスチジンキナーゼ(Hik1、Sln1)の変異体あるいはHik1を発現する酵母を用いて、浸透圧応答や病原性や薬剤感受性などへの関与の解析を進めた。昨年度までに、Hik1が高濃度の糖特異的な高浸透圧応答と糸状菌特異的薬剤(フルジオキソニル、イプロジオン、クロロネブ等)の感受性に関与していることを明らかにしていた。Hik1の機能を更に解析するためヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインのHik1機能への関与について解析した。Hik1遺伝子破壊株(Δhik1株)で野生型Hik1を発現させると、高浸透圧感受性と薬剤耐性が相補された。一方、ヒスチジンキナーゼドメインが機能しないHik1(H736V)やレスポンスレギュレータードメインが機能しないHik1(D1153E)を発現させた場合はほとんど相補が認められなかったことから、高浸透圧応答と薬剤感受性に両ドメインが必要とされることが明らかとなった。イネいもち病菌からSln1ホモログ遺伝子を取得し、相同組換えにより変異体(遺伝子破壊体、Δsln1株)を作成したが、通常の培地での生育速度や病原性には顕著な違いは認められなかった。昨年度、出芽酵母でHik1を発現させると、本来感受性を示さない糸状菌特異的薬剤に感受性を示すようになることを明らかにし、薬剤作用がHik1からYpd1-Ssk1-Ssk2/Ssk22-Pbs2-Hog1へと続く情報伝達系を介して伝達されることを示唆した。更にこの薬剤作用メカニズムを明らかにするためにHik1を発現する酵母で、薬剤の存在下にHog1が活性化されるかどうかを解析したところ、糸状菌特異的薬剤の存在下でのみHog1の活性化が認められ、薬剤作用はHog1の活性化を介して伝達されることが明らかとなった。
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Fungal Genet.Biol. 42
ページ: 200-212
Curr.Genet. (in press)