研究概要 |
出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを15〜25MPaで圧力培養すると細胞周期がG1期で停止する。この現象はトリプトファン要求株に特徴的に認められ、トリプトファン輸送体遺伝子TAT2を高発現させると細胞は高圧下で増殖する。既に私は高圧増殖変異(High-pressure growth)株を多数得ており、その原因遺伝子の一つ、HPG1がRsp5ユビキチンリガーゼの準優性変異であることを示している。すなわちTat2がRsp5の基質になっていて、HPG1変異の結果、Tat2はユビキチン化をまぬがれて安定化し、このことが高圧増殖の直接要因であること報告した。そこで本研究では、次なる遺伝子HPG2のクローニングを行った。驚いたことに、HPG2変異はTat2そのものに生じており、3つの変異アレルはTat2のN未端(Tat2^<Glu27Phe>)とC末端(Tat2^<Asp563Asn>, Tat2^<Glu570Lys>)に見つかった。これらの場合もやはり変異型Tat2はユビキチン化を受けにくくなり、高圧下で安定化していた。一方、Tat2の細胞内局在を調べたところ、野生型Tat2はゴルジ体やprevacuolar compartmentなど内膜系により多く存在していた。ところが変異型Tat2(すなわちHpg2)は細胞膜上に多く見いだされた。25MPaで圧力培養すると、野生型Tat2が速やかに細胞膜フラクションから消失するのに対し、Hpg2は安定に維持されていた。以上の結果はGlu27、Asp563およびGlu570残基が高圧下におけるTat2タンパク質のユビキチン化やエンドサートシスに重要な役割を果たしていることを示唆している。
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